ステップ4
キャブセット
 応用編

1)さじ加減
これまでキャブのニードルを5分ずつ絞るだの開けるだの書いて来ました。
5分=30度
これくらい動かさないと変化が体感しにくいので「5分」と書いたのですが、
実際には5分はおおざっぱです。

ニードル自体小さいので気づきにくいのですが、
10分〜25分、角度にして90度の範囲で調整しなくてはいけないハイニードルにおいて
5分(30度)動かすと実に3分の1も動かしたことになります。

慣れてきたらキャブ調整は2〜3分の僅かな範囲で調整してください。

例えるなら、水道の蛇口を開けるようにガバッと開けるのではなく、
ダイヤル式ラジオのチューニングを合わせるように繊細に操作してください。



2)コンディション
基本編でも書きましたが、ガソリンが燃えるには空気中の酸素が必要となります。

キャブは内部を流れる空気の流速によるベンチュリー効果によって燃料を噴射します。
従ってニードル開度が一定であれば空気量に対する燃料噴射量も一定なのです。
しかし、空気量は一定でも内包される酸素量は一定ではないのです。

つまりその日の気温、湿度、果ては標高による気圧によってもキャブを調整する必要があります。

気温が高くなると空気中の酸素密度は減ります。
燃料噴射量に対する酸素が減っているのでキャブを絞って調整する。
寒い時は逆に開ける。

湿度が高くなるとコレまた酸素密度は減ります。
従って雨の日や湿度の高い日はキャブを絞ります。
乾燥している時は開ける。

気圧は標高が高ければ高いほど下がります。
気圧が下がれば酸素密度も減る。
従ってキャブは絞る。
高い山の中にあるサーキットでは絞る。

気温 高い 絞る
    低い 開ける
湿度 高い 絞る
    低い 開ける
気圧 低い 絞る
    高い 開ける(標準)


寒い乾燥した冬、平地にあるサーキットではキャブはかなり開け気味となります。
ガソリンはカブらずに適正に燃えるのであれば、濃いほうがパワーが出ます。
秋から冬にかけてベストラップが更新される事が多いのはそう言った理由からです。

このように天気や季節によってもキャブセットは変化します。
前回調子が良かったセットが今回も良いとは限りません。
ちょっとずつニードルをいじって試して見ましょう!



3)レース時のキャブ調整
レースにおいてキャブ調整のテクニックは不可欠です。

まずローリング中は2stエンジンが苦手な低速走行をしないといけません。
高回転を重視したキャブセットでは低速走行時はカブり気味となります。
唯一調整できるハイニードルを操作して燃料を薄くします。
燃料ホースをつまんで燃料の流れを悪くするという裏技もあります。

そしてスタート!
薄くしておいた燃料を一気に解放します。
しかし開けすぎてカブらせてしまうと加速がもたつき1コーナーで抜かれてしまいます。
一気に、そして確実にハイニードルを開ける事が重要です。

レース序盤
あえて濃いめで走って自分のエンジンを温存する。
ピックアップの悪い状態で前車について行く、また抜かれないようにもしなければならない。

レース後半
キャブを絞ってラストスパート。熱ダレした相手を抜く!

先行逃げ切りであれば、逆に序盤薄くして後者とのマージンを広げ、
熱ダレした後半にキャブを開ける方法をとる。
(上記は戦略の一例です)


燃料が濃い状態は燃え残る燃料があるということ。
その燃え残ったガソリンは抵抗となるので完全燃焼させたいところではあるが、
燃え残りガソリンは同時にエンジンを冷却する役目も持つ。

エンジンの冷却効果を狙ったキャブ調整もテクニックの一つです。


キャブを調整しつつもタイムを落とさない走りが要求されるのです
簡単だけど奥が深いキャブ調整。
頑張って練習しましょう!