エンジン
カート用のエンジンと言えば2ストロークが主流です。
最近は4ストロークも普及してきましたが、世の流れに反してカートだけは未だに2st全盛時代です。
重さ、コスト、メンテナンス性、その全てにおいて今のトコロ4stより2stに利があります。
コンマ1秒を争う「レース」という側面を持つカート界において4stが浸透しない理由はココにあります。
しかし、4stはその敷居の低さから入門用には適しているので、
初心者やホビーは4st、中級以上は2stという棲み分けが出来ているような気がします。
カート専用設計の4stエンジンが開発されるまで当面この状況は続くと思われます。
さて、その2stエンジンですが、レースとは切っても切り離すことができません。
カートには「イコールコンディションで競う」という精神が根底にありますので、
タイヤも重量もエンジンもレギュレーションで厳しく規定されております。
エンジンの改造などもってのほかですが、確かに「速いエンジン」というものは存在します。
これはレギュレーションに抵触しない範囲でエンジンの駆動効率を上げるという方法で作成します。
「速いエンジン」があればレースにおいて有利なのは確実ですからね。
以下に一般的な「チューニング」例をご紹介します。
ここで言う「チューニング」とは改造ではなく文字通り「調律」という意味です。
ヤマハKT100の場合
元々入門用のエンジンでしたが、KTより上のクラスになるといきなりレベルが上がってしまうので、
現在は初級者から上級者まで広く普及するエンジンとなっています。
KTの場合、パワーが低いので各部の精度を上げて駆動ロスを減らす方向で仕上げます。
○ シリンダーの真円処理、垂直処理
長い間使用しているとシリンダーは楕円状に、且つ斜めにすり減ってきます。
状態が悪くなるとホーニングだけでは追いつきませんのでボーリングが必要になります。
○ ボーリング
新品KTのピストンサイズは52.00です。一般的に52.30になると調子が良いとされていますので、
一気にここまで削るという手法もアリです。
○ ピストンサイズ変更
通常52.30のシリンダーには52.30のピストンを組み合わせるのですが、
あえて52.30のシリンダーに52.25のピストンを組み合わせる手法。
シリンダーのクリアランスを広くとることで抵抗が減る。
○ クランクシャフト芯出し
1分間で15000回転にも達するクランク。この芯がずれていてはスムーズにフケ上がりません。
○ SPクランク
KTの上位モデルであるKT100SPのクランクを流用する。
耐久性は上がるがこれによるパワーUPは無い。
○ 進角
コイル位置をずらして進角させる。
始動性が悪化するが、トルクも回転数も上がるので定番中の定番。
あえてレギュラーガソリンを使用しデトネーションを誘発させて
進角と同じ効果を期待する手法もあるが、当然お勧めできません。
シリンダーヘッドにわざとカーボンを堆積させ圧縮を上げるなど裏技的な手法も聞いたことがありますが、
そう言うのは邪道です。基本は抵抗を少なくすることでエンジンの調子を最大限に引き出すのです。
気合いの入ったショップなどは新品エンジンを10基ほど購入し、
いきなりバラしてその中から状態の良いシリンダー、クランクを抽出しスペシャルエンジンを作るそうです。
まあ、代償としていくつかのダメエンジンができあがるワケですが。
このようにKTはエンジンを育てる必要がありますので、
箱出し新品よりも丁寧にオーバーホールしたエンジンの方が速いということも良くあります。
速いエンジンがあれば速いタイムが出せる訳ではありませんが、
レースにおいて有利になるのも確か。
エンジンのオーバーホールの際にいくつかメニューを追加してみては如何でしょうか?